この記事では、オーディオスピーカーの性能を十分に発揮させる、基本的なスピーカーセッティング方法を紹介します。
音楽やホームシアターなどに欠かせないスピーカー、手頃なものから高級品まで様々な種類があります。ペアで何百万もするような高級品はさぞ良い音がすることでしょうが、実はセッティング次第ではその性能の1割も発揮できないことがあります。
音は空気の振動が伝わることで耳に聞こえるわけですが、空気の振動は部屋の形や家具の配置、壁の素材など様々な影響を受けて変化します。
ボーカルやセリフが両スピーカーの真ん中から聞こえ、他の楽器などは右や左などそれぞれなっている場所がわかるようにするには、セッティングが重要になってきます。
セッティングとれていない高級スピーカーよりもしっかりとセッティングがとれているお手頃スピーカーの方が、良い音でなっていると感じるはずです。
電源コンセントやスピーカーケーブルで音が変わるといいますが、その違いがわかるようになるには、スピーカーのセッティングがしっかりされて、振動対策など余計な雑音対策がされた上で判別できるようになります。
この記事では、基本となるスピーカーセッティング方法を紹介します。
もくじ
スピーカーセッティングの基本形
部屋の大きさや形、窓やドアの配置などスピーカーセッチングに与える影響は様々ありますが、基本形を抑えることはとても重要です。基本を抑えた上で、それぞれの要素に合わせて調整をすることで、その部屋にあったセッティングが可能になります。
ここに文章
- 左右の横壁間の1/4の距離を目安に設置する
- スピーカー後ろに40〜50cmのスペースを開ける
- 左右のスピーカーとリスニングポイントで正三角形か二等辺三角形になるように設置する
- スピーカーの角度を内振りにし、定位を調整する
- ツィーターが耳の高さになるように調整する
左右の横壁間の1/4の距離を目安に設置する
スピーカー間の間隔をどのくらい開ければよいのでしょうか。家具などの問題がなければ理想的な配置は、設置する壁面の両端から1/4の場所です。
壁の両端からの距離を4等分した場所が、最も定在波の影響を受けない場所になります。
部屋を上から俯瞰で見た場合の定在波は、部屋の左右と中央付近に位置に発生します。
部屋を横から見た場合は、天井と床付近と中央の高さあたりに発生します。
正面から見た場合は、このようになります。
部屋の形や窓・ドアの位置、家具の配置などによっても影響を受けますが、四隅と中央に発生しやすくなります。この位置を避けるように配置できると、定在波の影響を受けにくくなります。
スピーカー後ろに40〜50cmのスペースを開ける
スピーカーを設置する面の壁際から、40〜50cm離す必要があります。壁ギリギリに近づけてしまうと、低音域が影響を受けやすく、本来の音が出なくなってしまいます。
壁面に共振して必要以上に低音域が強調されてしまったり、逆にバスレフポートが背面についているスピーカーなどでは、低音域が痩せてしまうこともあります。
左右のスピーカーとリスニングポイントで正三角形か二等辺三角形になるように設置する
左右のスピーカーの中心線上にリスニングポイントが来るように配置します。
両スピーカーの真ん中にリスニングポジションを設定することで、ボーカルなどの中央で鳴るべき音が、両スピーカーの真ん中に定位するようになります。
スピーカーの角度を内振りにし定位を調整する
各スピーカーをリスニングポジションに向けて内振りに配置することで、各スピーカーの中央に音の定位を安定させます。
内振りの角度によって定位感が変化します。スピーカー正面をリスニングポジションに向ける配置を基本形として、実際に音を聞きながら調整します。
定位感の良いスピーカーの場合は、ほとんど内振りをしなくても中央に音が定位します。逆に内振りにしすぎるとすべての楽器の音が中央から鳴っているようになり、音場感がなくなってしまうことがあります。
リスニングポイントに向けた状態から少しずつ開くように調節して、最適な角度を見つけましょう。この調整はミリ単位で納得のゆくまで厳密に行うと、スピーカー本来の音を引き出せます。
ツィーターが耳の高さになるように調整する
2WAYや3WAYなどスピーカーには種類がありますが、高音域を担当するツィーターをリスニングポジションで聞くときの耳の高さに合わせます。
中高音域は指向性が高いため、耳の高さに合わせることで上下の定位感を安定させることができます。オーディオボードやコンクリートブロックなどベースを安定させた上に、スピーカースタンドやスパイク、インシュレーターなどを利用して調整します。
足元を固めるオーディオボードは床からの余計な振動を抑えて、雑音を排除してくれます。ボームセンターで売っているコンクリートブロックやガーデン用大理石などでも代用できますが、専用品のほうが当然性能が良いです。
スピーカースタンドも床からの振動を抑え、スピーカー本体から出る振動もいなしてくれるため音が良くなります。様々な素材と高さがあるので設置環境に合わせて選びましょう。
インシュレーターで振動を抑えて高さを微調整することもできます。こちらも様々な素材と形状、大きなのものがあります。金属のものは中高音域がクリアに聞こえたり、木製だとマイルドになったりと、素材によって音が変わります。お好みの音になるように選びましょう。
部屋に合わせた調整
基本形のスピーカーセッティングができたら部屋の状況に合わせて調整をしていきます。
人の耳は構造上、左右の位置には敏感ですが上下の位置はそれほどでもありません。実際に音を聞いてみて上下に定位のずれを感じるときにのみ対策を施せばよいでしょう。
高音域は指向性が強くスピーカーの正面に向かって真っ直ぐ進む音が最も耳に届きやすいので、高音域を担当するツィーターを耳の高さに合わせるセッティングができていると上下の定位感も問題無いはずです。
低音域は指向性が低いためスピーカーの向きによる影響は少ないのですが、指向性が低いゆえにどこから鳴っているのか掴みにくく反射音の影響を受けやすくなります。
床面からの反射音と合わさって、低音が低い位置から鳴っているように感じる場合があります。その場合は、絨毯やラグなどを敷いて床面からの反射音を和らげる対策を行うことで、上下の定位感を調整します。
左右の定位を調整する方法は、直接音と反射音の力関係を数字に置き換えて考えてみるとわかりやすくなります。
直接音と反射音の力関係が均等になっている状態を定位が出ていると考えます。直接音と反射音のバランスが崩れると定位にずれが出るということになります。
スピーカーの配置が部屋に対して左右対称で、窓や扉の配置も全てが同じスタジオのような部屋であれば対策の必要はありませんが、実際には一般家庭でそんな配置は不可能です。
左右の反射音は、窓やドア、家具や部屋の構造、材質によって、大きく影響を受けます。ガラス窓や扉では反射が強くなり、カーテンなど柔らかい素材では反射が弱くなります。
図のように片側だけにカーテンがある環境では、カーテンに反射音が吸収されて弱くなり、定位が右側へずれているように聞こえます。
対策方法としては、右側に似た材質の吸音材を設置するか、左側のスピーカーをやや開き気味にして、より多くの音を反射音に割り当てる方法があります。スピーカーの角度を内振りにすると直接音の割合が増え、開くと反射音の割合が増えます。
またカーテンとは逆にガラスなどの反射率が高い素材が方がある場合は、スピーカーを若干内振りにするかガラスの前に音を拡散させる拡散ボードや家具などを設置して反射率を下げるようにすると良いでしょう。観葉植物なども良い拡散材になります。
まとめ
左右のバランス、耳の位置に合わせた高さなどスピーカーセッティングがきちんととれていると、カメラのピントが合うように音のピントが合って、今までの音がピンぼけしていたことがわかるようになります。
今使っているスピーカーの音がいまいち良くないと感じているようであれば、セッティングをしっかりとってみてください。スピーカーの性能がフルに発揮されていないだけかもしれませんよ。